Angels On The Dancefloor - 2026/05/29

tofubeats / Photography by Koichiro Funatsu


Angels On The Dancefloor
「Angels On The Dancefloor」は確かもう去年の今頃やっていた森道市場ではプレイしているので、1年以上前に骨子は出来上がっていた曲である。「TBEP」の頃に本格的に意識するようになった00-10年代の国産クラブミュージック「J-CLUB」を意識した作風のシリーズの中でも、久々に派手な曲ができたと自分でも思ったし、フロアでの反応もそれを後押しするものだった。ただ最初のタイトルは「DANCEFLOOR」で、これでも悪くないがリリースするにはもう一歩踏み込んだものが必要だった。そんな中でこのタイトルにする案が思い浮かび、ボーカルなどを更に追加して出来あがったのがこの楽曲である。おそらくそのタイトルが決まってすぐプレイしたのが昨年の森道市場なので、この作品が出るまで1年も掛かってしまった。この楽曲にはmimoidさん経由で鉄崎監督による素晴らしいMVも付きました。HIHATTのキャラクターであるおんぞうしや、ジャケでおなじみのあのキャラがアニメで動いてマジ感動…絶対に見て欲しいです。そしてそんな監督にMV製作前にお送りした本楽曲の解説をそのまま以下に貼り付けます。

・Angels on the dance floor を作る際にどんな意図で作ったかなどのコンセプトはありますか?
・どのような意図からこのようなタイトルをつけましたか?
ーそもそも今作はJ-CLUBという2000年代ー2010年代の日本のクラブミュージックを意識した作品になります。このJ-CLUBというジャンルは定義が難しいのですが、当時レンタルビデオ店でそのように分類されていた音楽を指して我々は使っています。
tofubeatsチームは前担当による「ハウスで1曲ヒットを作れたらよかったのにね」という発言や、TEI TOWA氏出演のイベントによく呼ばれることなどを真に受け続け、前作「NOBODY」、さらにその前の「TBEP」と、自らを「J-CLUB最後の残党」とポジティブともネガティブとも取れる表現で定義付けております。その中で自分が先輩たちから受け取ってきた国産クラブミュージックのエッセンスを改めて再考しておりまして、今作もそのシリーズの1作品として定義することができると思います。
前作「NOBODY」はコンセプトがわりと先行していたので、今作はもうちょっと実用的(DJで使えるという意味)な作品に振り切りたく、実際に昨年初夏から現場でブラッシュアップを続けてきたのがこの楽曲およびEPの収録曲群です。
ー本楽曲に限った意図といえば、シンプルにストレートなハウスミュージックにしたいという思いがあり製作したものです。曲名はお送りしたデータと同じく「DANCEFLOOR」という仮題でその歌詞飲み入った仕上がりだったのですが、楽曲完成後に今の曲名を思いつき、その後「Angels…」というコーラスを新たに追加しました。DJにとってフロアにいるお客様はただのお客様ではなく、自ら足を踏み締めて踊ってくださる天使であり、そのみなさまのリアクションによって我々が天国に行くことができる(かどうか決まる)…という構図です。すみません、めちゃくちゃ今考えました。ただDJをやっていてフロアを見ていて思うことはそういうことであり、だからこそ敬虔な気持ちで仕事(DJ)に向き合わねばと思ったりもします。逆に下手なことをすると黙示録を連れてくる存在でもあります。ちなみに自分が神でお客様が天使…とかそういうやつではないことを併記しておきます。
あと、クラブやライブハウスといったところは一人で楽しむことがおよそ難しい場所であり、多くの人がその日を楽しむというピースがはまってこそ楽しい時間が過ごせるのではないかと思ってます。そういう意味ではクラブに居る自分以外の存在全てがAngelsなのではとも思ったりしました。

・トーフさんの考える Angels はどのようなものですか? (西洋的なところと日本人では捉え方が違いそう、という点からの質問)
ー当方のイメージとしては過去作TBEPのジャケにいる天使のような存在、Lightsのジャケで立ちすくむ豚のような存在がありますが、カードキャプターさくらのケロちゃん、デ・ジ・キャラットのゲマだったり、自分の右肩あたりをうろうろしているかわいいキャラみたいなものがイメージとしては近いです。また、このキャラクター観とは少々矛盾してしまうのですが、一方で天使というものはどちらかというと守護神的なものというよりかは、「報せ」を連れてくる存在だと思っています。なので、天使が登場したり、見えていること自体が一種の何かのピークなのではないかと思います。

MVのビデオコンテの一部。初めてこのシーンを見たときに、なぜか「地獄やん」と思ってしまいました。自分の曲が嫌いなわけではないです。




let me tell u
 今回の作品製作時のメモに「本当にフロアでプレイできた曲のみを入れる」という設定があり、この設定を潜り抜けた楽曲群が主に収録されたのが本作である。他にも良い具合のデモはあったが今回は日の目を見なかった。「let me tell u」も1年以上前に8割ほどは出来上がっていて、フロアで少しづつ変わって行ったものである。1年間の熟成期間の中で最も多くドロップされたのが本楽曲だと思う。イントロの後ガツンとはいるブリーピーなベースは現場で聞くと自分もテンションが上がる。この楽曲はライブだとERICA SYNTHSのDB-01というベースラインシンセと絡めてやるのだが、そのインプロが良い感じだったのでそのまま楽曲自体にフィードバック。フレーズを追加してブラッシュアップしたものが本作に収録された。最後の10%がライブで仕上がっていった珍しい楽曲。

let me tell uのライブの様子。触っているのがDB-01


Be With You
 自分のコーラス素材を切り刻んでフレンチタッチなエレクトロに。ここ数年フレンチタッチリバイバルが来そうで来ない、でも来ているような気もする…そんな気持ちを込めました。今作のフレンチタッチオマージュとしては、本楽曲の他にM2「let me tell u」のMVがそれである。カットアップ楽曲の中でも燦然たるクラシックであるDJ MEHDIの「Signatune (Thomas Bangalter Edit)」のMVをぜひ見て欲しい。このドキュメンタリータッチなビデオをJでやってみたらどうなるんだ…と今回リミキサーで参加している横田さんに密着させていただいてやってみたものが今後公開されます。

Don’t Stop
 フロアでこういう楽曲が盛り上がったらマジで嬉しい、そんな1曲を作ってみようということで仕上げてみたのがこの1曲。個人的に思う好きな音楽の持っている要素として一種の「ドタバタ感」みたいなものがあるのだが、この曲には良い具合でそれが入れ込めたと思う。ブレイク部の凶暴さ含め個人的にはかなりフェイバリットチューンです。TR-1000のカウベル政治が効いてます。

Don’t You Know My Love? feat. 一十三十一
 ヒトミさんと最初に仕事をしたのは今調べたらもう2013年…嘘だろ…「CITY DIVE」というアルバムのリミックス盤のレコードで「Harbor Light」という楽曲をリミックスさせていただいたのが最初でした。多分その前後でイベントなどでお会いしたりしたはず。その後もアレンジで参加させていただいたり、周辺のピープルツリーとも関わらせていただくことが多く、なんとなく近しい先輩というふうに勝手に思ったりもしています。最近の南米圏での人気なども積み重ねによるスパークを感じ、勝手に胸がアツくなったり…しかしこのリミックス、今聞き直してますがまだmicroKORGの音とかがピョンピョン言ってるし、悪く無いけどハモリが微妙にディスコードしててなんか恥ずかしい…でも今も聞けるので聞いてみて…(笑)。サブスクには出てない模様。
この時にやりたかった…あとDJでプレイしていたようなスローなハウスのムードをまたやろうということで作ったのが本楽曲でした。最近の自分にとっての「J-CLUB」というものの中には、こういう当時プレイしていたりトライしていたけど実力不足でできなかったことをまた拾い集めていきたいという気持ちも多く含まれているのを感じます。
この曲は歌詞が無い状態でシレっとフロアで投入したりしながら様子を伺っていたのですが、フックと歌メロだけがある状態からスタックしてしまっていたのと、ストーリー性をどうにか持たせられないかな…ということでヒトミさんに今回は歌詞もお願いしてみました。tofubeats楽曲で歌詞を外注することはめちゃくちゃ珍しいので新鮮なコラボとなりました。ヒトミさんの官能的なムードが注入されオトナな1曲に。ジワジワとグルーブしていく展開も昔より上手くなってる気がするので気に入ってます。ヒトミさんは自分が音楽を始める前からずっと「オトナ」のムードを帯びていて、やっぱ憧れるな…と思うと同時に、そういうスタンスで居ること自体がオトナになるってことなんだよなと思ったりもします。
しかしヒトミさんのことを思い出す時、大臣と昔神戸のディスクデシネで「流線型のボーカルは一十三十一さんなのか、違うのか」という話題で議論したことが思い出されます、恥ずかしいです…笑
写真はRECの日の写真がこれしかなかったので、REC前に食べたパンと2013年当時のツーショットを…。

パンとコーヒー

with hitomitoi (2013年当時)



大丈夫 feat. 柴田聡子
 柴田さんは「Reebok」のリミキサーとして参加するはるか昔よりオファーしたいと思っていた存在(EIGHT-JAMで紹介させていただいたのってもう何年前なんでしょうか…)なのですが、ライブに行けば行くほど柴田さんの持つ強さや真摯さみたいなものにガツンとやられ、自分が適うような楽曲を作れるのかという畏れを抱いてしまうばかりでした。しかし今作の制作も終盤に差しかかったところで民穂さん山根さんによるジャケが仕上がって来て、この「歩道」「街路樹」みたいなものを足がかりに柴田さんにオファーする楽曲をもう一回頑張って作ってみよう、なんか作れるかも、と改めて思い、「なんかオファーいただけたらなんでもやります!」というPVTに共演した際のリップサービスを完全に真に受けて、断られる想定をせずに作ったのがこの「大丈夫」です。
 ちょっと前から「人に歌を歌ってもらうより自分で歌うほうが…」みたいなことをインタビューで言ったりもしていますが、それって歌を歌うことの凄みみたいなものがなんだかんだで年々わかってきて、それを知るほど人に中途半端なことを歌わせるのが怖い、みたいにも思っているのかなとも感じます。あと自分で雄弁に語れる人に歌ってもらうのって本当にある意味すごいことだよなと。とくにそれが自分の書いた歌詞であるほどに…今回はこんな仕上がりになりましたが、大丈夫ですかね?大丈夫?大丈夫になるように頑張ったつもりです。
 今作に通底するテーマでもあるのですが、最近こんなことばっかり考えて音楽を続けられているのは本当に毎日小さな奇跡が起き続けているからなんだよなと感じます。そんな奇跡を支えてくれるのはダンスフロアに居る皆様天使たち…自分に協力してくれる周りの皆様…これはDJ目線の話ですが、客として行ったクラブでも横に笑顔で踊っている人が居れば自ずと笑顔になるでしょ?はたまたそんな人が居なくたってDJが良い音楽をスピンしてくれれば1人で踊り続けられる?あなたにとっての良い報せを連れてくる人は誰?みなさんにとって今日のそれが柴田聡子さんであり、「大丈夫」であることを願います。

with Satoko Shibata / Photography by Koichiro Funatsu


Angels On The Dancefloor - KIRARA REMIX
 昨年初めて韓国で音楽フェスに出演するにあたって同じステージで共演させてもらったのがKIRARAでした。すでに日本の自分の知っているアーティストとの共演歴もあったり、会う前から近しいような気持ちだったのですが、KIRARAと会ってみてさらにそういう気持ちが深まりました。ライブパフォーマンスも圧巻で、胸に「전자음악(電子音楽)」って書いているTシャツを常に着ているのもグッと来ます。そこを背負える(前だけど)気概ですよね。
何より自分たちを好意を持って迎え入れてくれた彼女には本当に感謝したいです。「ここだけが唯一のREAL冷麺」として紹介してくれたウルチミョノク을지면옥も本当に美味しかったです…정말 감사합니다!
 KIRARAがフェイバリットを公言していたCORNERIUSや大沢さんの音楽は韓国では「shibuya-kei」と呼ばれ(日本と韓国での渋谷系の概念が違うことは他の記事を参照されたし)、それっていわゆる広義の「J-CLUB」じゃね?ということで今回KIRARAにリミックスをオファーさせていただきました。彼女いわく韓国にはいわゆる自分たちのようなソロの電子音楽アーティストというものがあまりジャンルとして存在しておらず、KIRARAや同日出演のIDIOTAPEなどがそのシーンをなんとか支えているという話を聞いたので、韓国の電子音楽家として「K-CLUB」なリミックスを是非…とメール。K-POPなどでそういうエレクトロニックな音楽もすごく先進的なのかと思っていたのだが、逆にそういうプロデューサー志向の人が多いようで、ソロやグループの単体アーティストとして活動する人は多く無いのだそうだ。誰か居たら是非教えてください。まぁ確かに自分のようなDJなのか歌手なのか何なのかよくわかんない活動様式がそこまで変とされない日本がそれはそれで変なような気もする。
 その後RADIO SAKAMOTOのイベントで来日したKIRARAとベローチェでお茶したとき、コンセプトとして「한」という言葉を教えてもらいました。感じにすると「恨」ですが、日本語で言う恨みとは違った意味のようで、その場ではしっかりわからなかったのですが、後々調べてみて確かにこれは韓国を表す一つのワードなのかもしれないなと思ったり。そんなことを考えながら是非噛み締めて聞いてほしいリミックスです。
 話はそれますが、韓国のバンドBulldog Mansionの「Destiny」を大胆にカットアップしたKIRARAの「Love Me」という曲にすごく自分はグッときたのでそれも是非。元ネタと横断するライブバージョンがYouTubeにあり、それもめっちゃ良いですね。

with KIRARA / Photography by Koichiro Funatsu


let me tell u - Micolas Mangia REMIX
 確かimdkmさんがtwitterで彼の前名義(Mi Mang)の楽曲を紹介していて、独自のムードを持っている楽曲群にヤラれ、ラジオなどで紹介していたところ、Bandcampの購入履歴から自分を見つけて連絡してくれたのがスタートでした。KIRARAと共演したフェスのタイミングで招待したら遊びに来てくれて、そこで絶対にリミックスオファーするからね!と約束してから早1年。名義も変わっての参加となりました。彼も彼で実は中国育ちらしく、中国で音楽を学んで韓国には最近帰ってきてまだコネクションなどもそこまで無いとのこと。そんなところからふとした拍子に自分と知り合って日本でリリース。人生いろいろで面白い。原曲よりダークながら展開もしっかりあってウォームアップにも使えそうなリミックスに。

with Micolas / Photography by Koichiro Funatsu

let me tell u - Shinichiro Yokota REMIX
 韓国勢2人を経て最後はJの大物、横田さんによるリミックスを収録。現在に至るまでの寺田創一さんとのタッグや、実は当初KRUSH POSSEなどにも関わっていたという根っからのOG…!裏でレアな昔のTV番組の映像も共有してくださったり、日本のクラブミュージックの歴史に興味津々な我々にいろいろ教えてくださって本当にいつもありがとうございます。
「let me tell u 」原曲のMVでも取り上げていますが、ナイトペイジャーという自動車パーツメーカーを経営しつつハウスのプロデューサーとしても活動するという二足の草鞋スタイルで、かつ両方の活動が響き合っているようなそのキャリアは唯一無二。ナイトペイジャーの方の経歴もめちゃくちゃ興味深く、今回そんな姿が映像に残っています。自動車ってマジで格好良いですよね。ハウス風味にドライブするこちらのlet me tell uもめっちゃ好きです。

昨年の横田さんとの共演時、即席コラボの様子が冒頭に。


今回ご活躍の皆様



tofubeats - Angels On The Dancefloor